あるところに、帽子をたくさん頭の上にのせて、あちこち売りまわる帽子売りがいました。まずはじめに自分の格子縞の帽子をかぶり、その上にねずみ色の帽子をのせ、その上に茶色の帽子、その上に空色の帽子、一番上に赤い帽子をのせて歩くのです。ある日、帽子を頭にのせたまま、大きな木にもたれてひと眠りしました。目がさめてみると、帽子がありません。木の上の猿たちに取られてしまったと気づき、何とか取り返そうと呼びかけますが、猿たちは帽子売りの真似をして「ツーツーツー」というばかり。かんしゃくを起こした帽子売りが、帽子を地面にたたきつけると、猿たちも帽子を投げつけ、帽子売りは無事にもどってきた帽子をかき集め、また頭にのせると、すましてまちへ帰っていきました。
様式的な絵柄には、とぼけた味わいがあり、話によくあっています。
■福音館書店 ■1970年
■43p ■22cm
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