第1回 発掘!図書館エピソード大賞(受賞者・エピソードのご紹介)
実際にあった図書館や本との関わりや心温まるエピソードを募集したところ、
62編の応募をいただきました。
審査を経て、下記のとおり大賞1編、優秀賞3編を決定しましたので、お知らせいたします。
受賞者には、表彰状、図書カード(大賞1万円、優秀賞5千円)を授与します。
主催:鳥取県図書館協会
※エピソードは原文ママ。適宜、改行しています。
大賞
タイトル「子供と ともに」
氏名 中原 牧美 さん
15年前、長男をベビーカーに乗せて散歩中の公園に、移動図書館が来ていた。そこで移動図書館の方に「借りれますよ」と声をかけて頂いたのだった。息子に読み聞かせをする絵本、離乳食の本を借りて帰った。その日から、2週間に1回来る移動図書館に通うようになった。
息子が歩き、自分で読みたい絵本を選ぶようになった。また、妹のために絵本を選ぶようになった。私が選ぶ本は、育児、弁当作りの本、家族旅行のための本、趣味、仕事の本、小説...と変化していった。子供達は兄妹それぞれ絵本、伝記、読み物、科学、動物、歴史...成長していく中で選ぶ本が変わった。その変化は頼もしかった。子供と移動図書館に通い、子育て中の孤独感から解放され、子供と本を一緒に楽しむ良い時間を持つことができた。
子育ての間、いつも側には、移動図書館があった。夏の暑い日も、雪の降る日も公園からいろいろな本の世界へ広げてくれたのは移動図書館だ。あの時、声をかけてくださった図書館の方との出会いに感謝している。
優秀賞(順不同)
タイトル「分岐点」
氏名 石賀 美月 さん
私の心の宝箱にしまってある、中学1年生の時の大切な思い出の話をします。
私は生まれつき左耳が聴こえず、左側から話しかけられても気付くことができません。そのため、人と会話するのが苦手でいつもオドオドしていました。そうして自然の摂理でクラスで孤立し、友だちがほしくても"どうせ自分なんて..."という心の声に負け、勇気を出してクラスメートに声をかけることができませんでした。
しかしある日、気まぐれに1人の司書さんのオススメの本を読んでから、私の人生は一変しました。オススメされた「レインツリーの国」という本の主人公は難聴で、主人公がもう1人の自分かのように感情移入してしまいました。物語の中でどんどん堂々と明るく変わっていく主人公に"私も変われるかも..."と勇気をもらいました。そして、勇気を出してクラスメートに話しかけてみたら、思っていたよりずっと簡単に友だちができました。
あの時の司書さんのおかげで人生が楽しくなりました!本当にありがとうございます。
タイトル「新たな居場所」
氏名 石名 望 さん
私は今まで、本を読まない人だった。しかし、ある時を境に"図書館"という空間が大好きになった。そして少しずつ本も好きになりつつある。
ある時、とは高校3年生の秋ごろ、受験に必要な資料を探しに行ったのが始まりで、その時感じた居心地の良さを求め、何回も足を運ぶようになった。私は進路が早く決まり、時間ができたので、自由な時間はほぼ図書館で過ごすようになった。
何がそんなに居心地が良いのか。学校にいると、どんな時も、誰かと一緒にいなくてはならないという暗黙のルールがあるように思われる。本当は全然そんなことないのに、みんな1人にならないように必死になっている。そんな現実がわずらわしくて、図書館に通うようになったのだと思う。
私は本を読むとき、自分自身と照らし合わせて読むことが多い。だから、本当の意味で自分自身と向き合えているような気がする。そして、どんな本でも読んでいいよという寛容さで身構えていてくれる司書の先生や図書館はなんともいえない落ち着きを覚える。
最近は本を読むようになった。本を通してたくさんの人と触れあえることを知った私は、本が大好きになりそうである。
タイトル「爬虫類と図書館の巡り合わせ」
氏名 渡邊 兆 さん
公立鳥取環境大学の情報メディアセンター(図書館)には、生きた爬虫類達(カエルもいるけど)とそれが登場する書籍が展示されてあるコーナーがあります。きっかけは私が、自分の飼っている動物たちで何かイベントをしてみたいと思っていた時に、図書館の空きスペースを利用した企画を提案されたというものでした。
「爬虫類のいる空間で読書」をコンセプトに企画書を作ったところ、あっさり通っちゃった。そのままの流れで家から水槽やライト、そして動物たちを連れて企画を開始。結果はまさかの成功!なんということでしょう。今までほとんど使われなかった奥の窓辺に、ちらりほらりと人が訪れるようになったのです。
しかも、静かで落ち着いた図書館の環境は、爬虫類達にとっても居心地が良いようです。また、私が講義でいられない時、なにか面白いことがあれば友達や職員さんが教えてくれました。お蔭で餌やりや掃除をしやすくなるだけでなく、知られざる彼らの生態を理解する上での重要なヒントも多く手に入ってきます。
今後は図書館の雰囲気を重視しながらも、更に企画を楽しんでもらえるようにしていきたいです。その中で他の方々に、新しい図書館の活用方法を見出すきっかけになれたら幸いです。