【電子書籍】「鳥取県立図書館電子書籍サービス」における読書バリアフリーへの対応
令和5年12月1日(金)から令和6年1月3日(水)までの期間中に、視覚障がいのある方と一緒に「鳥取県立図書館電子書籍サービス」を操作する機会を設け、読み上げ機能や動作の確認を行いました。
令和6年1月4日(木)から電子書籍サービスを本格的に運用するにあたり、試験運用期間に行った検証等について下記のとおり報告します。
○ 閲覧画面(本文ビューア)の音声読み上げについて
○ 音声読み上げ対応ソフトウェア・アプリケーションについて
○ 電子書籍サービスへのアクセスや利用にあたっての課題と対応
○ 今後の対応について
閲覧画面(本文ビューア)の音声読み上げについて
当館の電子書籍サービス(KinoDen)には、以下のファイルフォーマットがあります。視覚障がいのある方が利用する各デバイス(=スマートフォンやパソコン、タブレットなどの情報端末)で、閲覧画面の本文読み上げ可否を検証しました。
(1)EPUB形式(EPUBリフロー形式)
端末の表示環境(画面のサイズなど)によって、文字の大きさや解像度が自動で変わる形式です。①②いずれかの方法で、本文を読み上げることができました。
① 画面右上にある縦の3点リーダー(︙)をクリックし、「音声読み上げ」を選択
② 画面右下の下から2番目のアイコン(人のイラスト)を選択
なお、EPUB形式(EPUBリフロー形式)の資料は、音声読み上げ対応ソフトウェア・アプリケーションの有無にかかわらず、どなたでも音声読み上げ機能を利用して閲覧することができます。資料検索の際「本文読み上げ可」にチェックを入れると、音声読み上げに対応する資料を絞り込むことができます。
(2)EPUB Fixed-Layout形式、PDF形式
EPUB Fixed-LayoutとPDFは、端末の表示環境に関わらず、画面レイアウトが固定された形式です。動作確認を行った際は、PDF形式では音声読み上げ機能を利用することができませんでした。
KinoDenを運営する紀伊國屋書店によると、「PC-Talker」などのスクリーンリーダー(=画面読み上げソフトウェア)を利用すれば読み上げ可能な資料もあるようです。(※ただし現時点で、EPUB Fixed-Layout形式・PDF形式における読み上げ対応資料の一覧等はありません)
音声読み上げ対応ソフトウェア・アプリケーションについて
視覚障がいのある方が利用する各デバイスで操作確認を行いました。これらのソフトやアプリケーションを使用すると、音声情報を頼りに当館ホームページからMyライブラリへログインし、KinoDenの資料検索、検索結果を経て、閲覧画面にアクセスすることができました。
それぞれの資料(閲覧画面)の読み上げ可否は、ファイルの形式によります。上記閲覧画面(本文ビューア)の音声読み上げについてをご覧ください。
Apple製のデバイス(Mac、iPhone、iPad)
VoiceOver(ボイスオーバー)
iPhoneやiPadなどに内蔵されているスクリーンリーダーです。端末の設定をオンにすると利用できます。
(設定方法)
設定→アクセシビリティ→VoiceOver→右にスライドしオンにする
Windowsパソコン
スクリーンリーダー「PC-Talker(ピーシートーカー)」/付属の読み上げソフト「ネットリーダー」
「PC-Talker」は、Windowsの操作を音声で案内するスクリーンリーダーです。このソフトウェアをインストール後、さらにウェブページの読み上げソフト「ネットリーダー」をインストールすると、インターネットの情報を読み上げます。CD-ROM形式で、有料です。
PC-Talker https://www.aok-net.com/screenreader/
ネットリーダー https://www.aok-net.com/screenreader/netreaderneo.html
NVDA日本語版
無料でダウンロードできるスクリーンリーダーです。
NVDA日本語版 https://www.nvda.jp/
Androidスマートフォン・タブレット
TalkBack(トークバック)
音声とジェスチャーで端末を操作するユーザー補助機能です。端末の設定をオンにすると利用できます。
(設定方法)
設定→ユーザー補助→TalkBack→右にスライドしオンにする
電子書籍サービスへのアクセスや利用にあたっての課題と対応
操作確認をする中で、当館ホームページから電子書籍サービスへのアクセス過程や、音声情報の内容について、不便さや分かりにくさがあるという課題が見つかりました。このたびの検証を踏まえ、本サービスをより使いやすく分かりやすいものとするため、下記のとおり対応を行いました。
トップページにある電子書籍バナーの位置変更
課題
県立図書館トップページの場合、スクリーンリーダーを使用すると「蔵書検索→特色あるサービス→お知らせ→画面左側のバナー→画面右側のバナー」という順番で読み上げました。12月の開始時には「電子書籍バナー」が画面右側にあったことから、ページにたどり着くのに時間がかかりました。画面が縦型のスマートフォンにおいても、読み上げの順番はパソコンと同様に時間がかかりました。
対応策
バナーの位置を左側に変更し、読み上げ順が早くなるよう改善しました(スマートフォンもバナーの位置が上に移動したため、同じく読み上げ順が早くなりました)。
(電子書籍バナー)
(パソコンの画面)
(スマートフォンの画面)
トップページへの「青空文庫」バナーの追加
課題
「青空文庫」は、著作権の保護期間が満了した作品や著者が許諾した作品を、テキストファイルやHTML形式で公開している"インターネット上の電子図書館"です。(利用無料)
テキストファイルのため、大きな文字での印刷や音声読み上げが可能であり、視覚障がいのある方も音で読書を楽しむことが可能です。「鳥取県立図書館電子書籍サービス」には約1,600冊の資料がありますが(令和6年1月現在)、みなさまがより多くの資料に触れていただけるよう、青空文庫含め電子書籍に関する情報を1か所にまとめることを検討しました。
対応策
青空文庫のバナーを電子書籍バナーの下に配置し、アクセスを容易にしました。
(青空文庫バナー)
MyライブラリにあるKinoDenバナーの読み上げ改善
課題
Myライブラリにある「KinoDenバナー」の読み上げ内容が分かりにくく、音声情報による電子書籍サービスへのアクセスがうまくできませんでした。
検証時には、Windowsパソコンでは「キノ」、iPhoneでは「鳥取県立図書館 e-library link(イーライブラリーリンク)」と読み上げ、デバイスによっても読み方が異なっていました。
対応策
KinoDenバナーを選択した際「電子書籍サービスへのリンク」と読み上げられるよう調整し、利用者にとってより容易なアクセスとなるよう改善しました。
今後の対応について
・EPUB形式の資料を積極的に選書し、音声読み上げに対応するコンテンツを充実させていきます。
・電子書籍サービスがあらゆる利用者に対応した使いやすいものとなるよう、みなさまのご意見を伺いながら引き続き改善に取り組んでいきます。