Biz TALK Voice10 吉村産業 株式会社
吉村産業は自動車販売、建設業、金属加工などを幅広く手がける企業です。趣味で始めた家庭菜園を通して多機能シート押さえ具「ささエール」を開発し、特許・商標登録をする際に倉吉市立図書館の知財無料相談会(協力:INPIT 鳥取県知財総合支援窓口)を活用されました。代表取締役の吉村さんにこれまでのあゆみをお聞きしました。
商品開発のきっかけ
はじめは趣味で家庭菜園を行っていました。畑を作るためにビニールシートなどで覆い、植物の苗や種を植え付ける穴を空けなければいけない「マルチ」を張る作業はひとりでは難しく、かなりの手間がかかりました。苗を植え終わった後でも、風で飛ばされそうになったり、シートが浮き上がり穴の位置がずれて植物が痛んでしまうこともあります。そこで、マルチングの穴を押さえてしまうのはどうだろうかと思い、一人でも農作業を手軽に行える道具を開発しようと考えました。
商品開発までのみちのり
商品の開発そのものは、誰かに相談したわけではなく自分自身のアイデアによるものです。穴を押さえる機能だけでなく、苗が倒れないために支え木として使い、棚にかわる棒を使うことがあるため、その棒を立てられる工夫もしてみました。試しに作成し、穴を窪みができる程度押さえ込み設置したところ、水が中心に集まり水の吸収が良くなりました。その結果、通常200~300個採れるミニトマトが1000個近く採れるほど、多くの作物が採れるようになりました。また、これを使うことによってトマトの苗を20本植えるのに棚を組む作業を含め、大体1日かかってしまうところを1時間もかからないほどに短縮することができました。ステンレスを使用しているためさびることもなく、作業効率も収益率も上げられます。現在はトマト、ピーマン、なす、ゴーヤ、エンドウ豆等を育てており、その全てに「ささエール」を使用しています。柱が必要な植物を簡単に固定できるメリットがあります。苗1本の作成時間は5分もかかりません。ホームセンター等では原価が高いため店頭での取り扱いが難しく、個人向けに販売していました。今年(2022年)の3月、日本海新聞に記事が掲載されたことで問い合わせが多くなり、300本ほど売ることができました。
産業支援機関や図書館との出会い
この商品を是非誰かに使ってほしいと思い、特許を取るために支援機関さんに相談してみたところ、ステンレスを使用しているので制作過程に困難が予想され利益をだすことは難しく、資金もかかりすぎるため、諦めたほうがよいと言われてしまいました。しかし、「ささエール」を作る度に"こんな便利なものを世に出さないのはもったいない!"という思いが強くなりました。どうにかならないものかと次に倉吉商工会議所さんに相談に行きました。そこで倉吉市立図書館とINPIT 鳥取県知財総合支援窓口が連携して開催している知財無料相談会を勧めていただきました。
相談会には昨年(2021年)と今年(2022年)に2回行き、特許と商標の申請・登録につながりました。図書館を利用して、ものの考え方や捉え方、見方が変わりました。商品を市場に出すにあたり何をしたらいいのかを詳しく教えていただき、ホームページ等での広報協力もしますよ、と声をかけていただきました。
今後の活動
「ささエール」に続き、現在は「スライドハンマー」の特許を申請しています。一回で20~30センチの深い穴が掘れるハンマーで、支柱を簡単に立てるための道具です。これを用いて手では掘りきれない、木の根元などにも穴を空けられます。病気になった樹木に、土壌改良剤及び栄養を与え、根を傷めずに木の状態を観察したりすることに使われます。日光東照宮や軽井沢の万平ホテルの神木の状態を観察する際にも使用されました。大きさは大小2種類あります。知財無料相談会で、もう少し改善できそうだとのアドバイスをいただいたため、「スライドハンマー」を特許申請することにしました。
また、完全無農薬で植物を育てることも検討中です。殺虫・防虫効果のある商品を開発しているところであり、完成に近いところまで来ています。
読者へ向けて
近々ホームページを作り、ネット販売を開始できるよう準備を進めています。図書館にも関連資料があるため、それらを活用して販売戦略の参考にできたらと考えています。現在は個人向けに販売しています。お問い合わせの電話をいただければ販売いたします。